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6月から新しく導入された刑罰について解説します。
皆さんは「拘禁刑」というものをご存知でしょうか。これまで刑罰は「死刑」「懲役」「禁錮」など6つの種類に分類されていました。
しかし6月から、このうち「懲役」と「禁錮」が一本化され「拘禁刑」と呼ばれるようになります。
刑務所に収容されるという点ではこれまでと同じですが拘禁刑には刑務作業の義務づけはありません。
一方で、犯罪歴や年齢、障害などの特性をもとに受刑者を24のグループに分類し、更生に向けてそれぞれに応じた作業・指導が行われるようになります。
「懲らしめから更生へ」
新たな取り組みが進む刑務所の現場を取材しました。
◆TOS児玉直輝
「今月から導入された拘禁刑、これにより今刑罰の在り方が大きく変わろうとしている」
700人以上の受刑者を収容している大分刑務所です。
ここには殺人や強盗などの罪を犯した比較的刑期の長い受刑者が多く収容されています。
6月から導入された拘禁刑への対応はこの大分刑務所でも始まっています。
◆大分刑務所刑務官
「拘禁刑が施行されたことで作業や各種指導を柔軟に組み合わせてそれぞれの受刑者に応じた教育を行うことになるので、今まで以上に受刑者の特性や問題性に応じた処遇を行うことができる」
では実際に、拘禁刑ではどのようなことが行われるのか。
北海道の札幌刑務所で一足早くモデル事業が実施されていました。
◆札幌刑務所の刑務官
「右クリックで新規作成」
これはパソコンの訓練をしている様子です。
社会復帰後の就労に繋げようと受刑者の能力に合わせた指導が行われています。
◆作業療法士
「心の症状を持っている人の方がストレスに弱い部分が強くなりやすいので」
また、受刑者の精神状態などを改善しようと作業療法士や看護師といった専門家による講習も開かれていました。
「懲らしめから更生へ」。こうした改革の背景にあるのは再犯率の高さです。
法務省のデータによりますと2023年の再犯者率は47%。
初犯者の数が年々減少しているのに比べて再犯者の減少が進んでいないため再犯率の高い状況が続いてしまっています。
刑務所で勤務経験のある研究者は塀の中での暮らしと実際の社会生活との間に大きなギャップがあると指摘します。
◆龍谷大学法学部 浜井浩一教授
「これまでの刑務所は規律を維持する、懲役刑を執行するという観点を最重要視していて受刑者に対してある種ロボットのような生活を強いてきていたと。その結果社会に適応できない人たちを大量に作り出したのではないか」
こうした中、大分刑務所に2025年新しく設置されたのはクッションや観葉植物が置かれた「リフレクティングルーム」と呼ばれるスペースです。
ここでは受刑者と刑務官などが対等な関係で会話をすることで社会に戻って必要なコミュニケーション能力の向上を図ります。
また溶接の工場などではこれまで以上に専門性の高い講習が定期的に開催され受刑者は出所後の就労に役立つ資格を得られやすくなりました。
◆大分刑務所刑務官
「受刑者たちが自主性を持って一歩一歩反省をして少しでも社会に向けた復帰しようとしているのが見えてきている」
受刑者の未来を見据えた拘禁刑ですが一方で課題もあります。
◆大分刑務所刑務官
「我々刑務官が多くのスキルや専門的な知識を身に着けていかなければならないのでその点が課題」
受刑者の更生を願う刑務官たちにとって拘禁刑は画期的な取り組みである一方これまでより負担は大きくなっています。
◆龍谷大学法学部 浜井浩一教授
「全員を等しく同じように扱って管理していくことで、刑務所の秩序を維持してきた刑務官がそれとは真逆のことをやれと言われることになる」
明治時代に刑法が制定されて以来初めて刑罰のあり方が変わり、導入された拘禁刑。社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか。